[読書メモ]『四次元時計は狂わない』

p3
私は[…]取材して書くことが本性となっており、筆先三寸、舌先三寸で人をまるめ込むようなことはしたくないと思ってきた。

p6
雑多なもの、どうでもいいものは、最初から意識的に排除して、目の前にあっても見えないようにすることで世の中がよりよく見えるようになった

p19
子供のときにこういう不安定な「ディアスポラ生活」(流浪民生活)を原体験として持ってしまうと、どこかに腰を落ち着けた普通の人の普通の生活がなかなかできなくなってしまう。私の青年期は、ほとんど毎年のように引っ越しをする、風来坊生活がむしろ常態だった。

p26
樹木には基本的に寿命なんてないんです。樹齢百年、樹齢千年の樹木は同一個体が生き続けているんです。水と栄養と太陽光線が供給されつづければ、樹木は何年でも生きつづけられます。

pp39-40
本当のサンクチュアリは、人間が意識的に作れば作れるというものではない。それは自然にできあがるものなのだ。誰に教えられなくても、万人がそこにいくと、自然に頭が下がるような空気が醸し出されている場所こそ本当のサンクチュアリなのだ。

p48
国家基幹技術とは、国家が命運をその技術の成否に賭けるくらいの重要技術ということだが、2006 年にその一つに「X 線自由電子レーザー」が選ばれたとき、それがなんであるかを知っている日本人は、ほとんどいなかった。

pp66-67
それだけ精度が上がると、その精度を確かめるのも大変だ(現行の世界最高時計でもチェックしようがない)。結局、二台の試作機を作り、相互参照しながら精度を上げていっている。/時計も、これくらい精度が上がると、全く異質の計測器になる。単なる時間の計測器ではなくなって、アインシュタインの相対性理論でいう、「時空の歪み」を測ることができる計測器になる。

p67
アインシュタインに従えば、我々が住んでいるこの世界は、時間と空間が深く結びついた四次元世界である。超高速(光に近いスピード)で移動している空間では、長さがちぢんだり、時間が遅れたりする。これは、実験的にも証明されており、超精密時計を飛行機やロケットに乗せて飛ばすと、たしかに微少な時間遅れが生ずることが確認されている。

p73
日本の住民登録制度はかなり普通ではない。住民登録制度とは、いってみれば、国家が全国民の住所を常時把握していて、それを管理する(住所を変更するたびに官公署に届けさせる)という制度である。これは全体主義国家的制度で、「誰がどこに住もうと個人の自由」という憲法で保障された基本的人権、「居住移転の自由」に抵触する恐れの強い制度だと思う。[…]日本では、引越すたびに住民登録をして、いつでも住民票を取れるようにしておかないと、できないことが山のようにある。選挙、就職、入学、公的試験の受験、公的制度の利用(年金、医療保険など)、免許・パスポートの取得、などなど、各種の市民権が行使できない。銀行口座の開設、不動産の購入、他人との契約関係に入ることなどもできない。

pp75-76
いまほとんどあらゆる国家がいずれかの立場から、全国民を背番号で管理する体制をとっている。[…]税と社会保障の両面で公平原則を貫こうとすると、結局それしかないのである。

p76
運転免許証はそんなに昔から広く使われていたわけではない。運転免許の保有者が、人口の半数を超えたのは 1990 年あたりで、それ以前は社会の少数者だった。

p79
生存率がガンの種類によって大きくちがうことだ。[…]肺ガンになると、わずか 3% しかない。

p82
誰でも1日 150 リットル(ドラム缶1本分)の原尿を生産しているが、肝臓でその水分の 99% をリサイクルして体内に残してくれるから人は干からびないですむ。残り 1% の水に老廃物を詰め込んで捨てるものが尿だ。

p85
人間を地球に縛りつけられた存在と考えるのはやめにして、人間は宇宙のどこに居住空間を移したっていいと考える「宇宙人」に進化することが必要だ。[…]これからは、宇宙のすべてを自分たちのホームグラウンドと考え宇宙全域を活動の場とする本格宇宙人に進化する必要がある。

p115
アメリカの現代社会をむしばむ、諸悪の根源は、ほとんどがベトナム戦争起源だ。戦費がかかりすぎて、経済が破綻し、ドル価値の下落過程がはじまったのもそうなら、社会の各層に麻薬が浸透し、アメリカの社会全体が麻薬づけになってしまったのも、ベトナム戦争以来だ。/ベトナム戦を契機にアメリカは、あらゆる意味で自信喪失国になってしまった。

p123
自爆テロ(起源は日本赤軍のカミカゼ・アタック)

p131
要するに、両国とも竹島(独島)は自国のものと主張しつづけてよいのだ。独自の主張を永遠に続けることをお互いに認め合うということなのだ。竹島のように意見が真っ向から対立し、両国とも一歩も引くわけにはいかない領土問題を『解決』するには、このような「未解決をもって解決とする」ことしかないのかもしれない。

p132
我々の、この世代の人間は知恵が足りません。この問題は話がまとまりません。次の世代は、きっと我々よりは賢くなるでしょう。そのときは必ずや、お互いに皆が受け入れられる良い方法を見つけることができるでしょう

p133
外交においては、話題に取り上げれば必ず悪い結果を招くとわかっている問題については、はじめからスキップしてしまう(タナ上げにする)というのが、ただしい選択ということだ。

p133
現状維持がつづく限りにおいて、戦争は絶対起こらない。戦争が起るのは、必ず現状が変更されるときだ。

p172
世界の図書館がいま全自動化しつつある

p187
現代社会はすべてプラグマティズム(理屈より実践的行動)で動いている。ワケがわからなくても、結果よければすべてよしなのだ。

p239
核融合は宇宙ではありふれた現象だ。夜空を見上げて光るものを見たら、それはすべて核融合の火なのだ。それがいずれも億年単位で燃えつづけているということは、そこではすべてブートストラップ現象が成りたっているからなのだ。我々はそれを自ら手にする一歩手前のところまできているのだ。

p242
そもそも日本人には、明治維新以前、世界史という枠組で、同時代のできことをながめる視点が存在しなかった。[…]世界の列強諸国との付き合い方を一歩まちがえると、とんでもないしっぺ返しを受けるものだということを身をもって学んだのは、おそらく日清戦争の三国干渉からではないか。

pp247-248
私は実はそれほど倫理における厳格主義者ではない。厳格主義者なら「こんなの絶対ダメ」と叫ぶ場面でも、それなりの弁解が成りたつならまあ許してしまう人間である。絶対の真実などわかりっこないと思っているから、ほどほどの真実がつかめばいいと思っている。私はもともとが文学畑出身の人間であるから、過ちを犯す人間を糾弾するより、そういう人間の心の内面をさぐるほうに興味がある。

p250
私はこの一件において何より重要なのは、STAP 細胞(現象)があるかないかの一点であり、それにくらべたら少々の論文不正など(全部がでっち上げデタラメでないかぎり)大した問題ではないと思っている。