[読書メモ]『映画365本 DVDで世界を読む』
pp6-7
映画は第一に面白いものでなければ話にならない。映画は飽くまで娯楽なのです。ヨーロッパや日本にありがちな、観ていてちっとも面白くないアート・フィルム、ひたすら重いだけの社会思想ムーヴィーなどは、私はご免蒙(こうむ)りたいですね。
p62
メディアによるねつ造は何故起こるのか?/この映画は最も一般的な答えを出している。つまり「皆を面白がらせるため」。
p73
然るに、全編に緊張が漲(みなぎ)っている。ありふれたストーリーなのに少しも飽きさせない。スペクタクルの要素など微塵もないのに、いつのまにか深い怒りに包まれ、静かな高揚で心が揺さぶられる。
p164
アメリカ映画は基本的に健全性を大事にする。もちろんハリウッドでは、アンモラル(非道徳的)な作品も数多く制作される。しかし、基本線はやはり啓蒙的で教育的だな、と思うのは、本作のような子供向けの長編アニメ映画に、その性向が濃厚に滲(にじ)み出ているからだ。/ここには日本やヨーロッパの子供向け映像作品にそこはかとなく漂う文学性−−あえていえば残酷や非常や虚無の陰など微塵も感じられない。
p170
これほど滅茶苦茶なことをやってのけた映画はついぞない。まるで凄まじい速度で暴走するヴィークルに放り込まれたような気分だ。しかも、その「滅茶苦茶」や「暴走」が周到な計算の上に成り立っている。だからこそ、全体として映像はスタイリッシュに纏(まと)まり、ハイエンド感すら漂う仕上がりになっている。