[読書メモ]『日本語は「空気」が決める』
p16
理論言語学が「正しさ」の言語学だとするならば、社会言語学は「ふさわしさ」の言語学です。
p41
無標(unmarkedness)は、特殊な条件がなければ自動的に選ばれる標準、すなわちデフォルト(default)のことです。一方、有標(markedness)というのは、特殊な場合に選ばれる目立つもののことです。
p42
幼児語は美化語が選ばれる傾向があります。「おめめ」「おはな」「おみみ」「おようふく」「おみかん」などがそれに当たります。
p92
外で働く年代になると、社会的な関係が中心になります。学生生活が終わり、社会人になると友人が減るといわれます。働くということは、好き嫌いを問わず多数の人と社会的関係を結び、適当な距離を取りながらつきあっていくということです。
p105
話し手は、利き手との親しさを示すために、利き手の使っている言葉に同調(speech accommodation)させ、そこに自分の言葉を収束(speech convergence)させていく傾向があります。こうした傾向に従って人間は言語行動をおこなっていると考えるのが、アコモデーション理論(accommodation theory)です(Giles et al. 1991)。
p106
日本人が外国人と話すとき、できるだけわかりやすい日本語で話そうとする傾向が見られます。フォーリナー・トーク(foreigner talk)と呼ばれるものです。
p109
官公庁からの文書や社内文書では、目上、目下にかかわらず「殿」が使われる監修がありましたが、「殿」が上下関係を強いるものという意識が強まるにつれ、失礼と感じる人が多くなり、地方自治体では「様」に切り替えるところが増加しています。
p128
文体の切り替え(style shifting)
pp166-167
そうしたキャラクターから、乱太郎は「わたし」、しんべえは「ぼく」、きり丸は「おれ」という一人称を使います。[…]きり丸は大人相手のときには「おれ」ではなく「ぼく」を使います。こうした細かい一人称の使い分けもまたキャラ立てに一役買っています。
p171
日本語はゼロ代名詞言語(pro-drop/pronoun-dropping language)と呼ばれることがあります。文脈からわかる場合、代名詞はないのがふつうであり、特別なニュアンスを込めたいときだけ人称表現を表出するということです。
p173
最近増えてきている一人称に、「こっち」「こちら」というものがあるそうです。
p194
イマージョン・プログラムとサブマージョン・プログラム
p204
外国語(第二言語)を学ぶことによって母語(第一言語)が相対化され、新しい発想を獲得できる側面はあると思います。
p218
ツッコミの機会は逃さず、必ずツッコむ。それが、大阪弁の会話の「お約束」です。「なに言うてんねん」と相手の誤りを明確に指摘し訂正しても、失礼になりません。むしろ、訂正しないことのが失礼になるのです。
p233
音声面でいうと、語尾上げ(uptalk)、あるいは半疑問(high rising terminal)と呼ばれる現象が広く観察されます。
p243
リンガ・フランカ
p268
文化の豊かさは多様性のなかに育まれるものです。