[読書メモ][Kindle]『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』
Loc 384
ところがテレビの情報は客観的情報として提示されているかのようにみえた。テレビが伝える相撲の結果は、間違いなくそのとおりなのである。もちろんテレビにも作り手の主観が介在してくるのだけれど、そこで映し出され語られているものが、あたかも客観的な事実であるかのごとく伝えられていくのがテレビである。こうしてテレビの普及は、口語体の情報であるにもかかわらず人々から「読み取る」という操作を消し去らせ、与えられた情報を事実として受け取りその感想のみを感じるという、情報に関する新しい作法を生みだした。
Loc 866
それでもなお人間がおこなう貯えは、自然界の生き物のそれとは違っている。ひとつに自然界の生き物は必要量しか蓄積しないが、人間はその必要量がわからないから、不安がある限り貯えを増やしつづけることになる。
Loc 1150
歴史学は文献=文書の読解をとおして、過去を忠実に、正しく描こうとする。ところが過去に向ける人間のまなざしは、その時代を包んでいるものとともにある。人間たちはその時代の問題意識をとおして、過去を考察してきたのである。[…] 過去とは現在から照射された過去である。
Loc 1361
近代形成期の歴史学も歴史哲学も、ヨーロッパ特有の発想の上に成り立ったことを述べたかったからである。たとえそれをキリスト教の神だと言わなかったとしても、歴史には超越者の意志、神の意志が働いているという発想にも、また歴史は合理的な因果関係によって展開していて、この合理的な因果関係に絶対性をみる発想にも、ヨーロッパ特有の精神が投影しているのである。
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