[読書メモ][Kindle]『仕事と家族』

Loc 143
富の平等な分配と環境保護は現在でも、市場に任せておくとなかなか達成されない二つの社会的課題である。

Loc 1189
現在の日本では、年功制、職能資格制度(能力主義)、成果主義の三つの要素で賃金が決まることが多い。これに対して欧米では、基本的には職務給制度、場合によっては成果主義、というのが基本的な枠組みである。能力主義はほぼ採用されていない(熊沢1997)。

Loc 1245
働き方に限定性がないことが「日本的な働き方」、正確にいえば基幹労働力として雇用された労働者の働き方である。この無限定性と引き換えに比較的高い賃金と長期雇用をあてにできるようになる。逆にいえば、これらを受容しないかぎり、賃金はかなり低くなる。転勤のない一般職やパート労働がそうである。

Loc 1286
均等法についてしばしば指摘される問題は、「抜け道」の存在である。均等法についての議論では、「間接差別」の取り扱いが焦点となる。というのは、たとえ募集・採用において明示的・直接的に男女差別をしていなくても、「これに応じるのは男性にとっては問題ではないだろうが、女性にとっては厳しいだろう」と考えられるような要件を設けることによって、実質的に差別的採用を行えてしまうからである。

Loc 1366
EU加盟国では、各国が順守することを要請された「指令」によって労働時間の上限規制が実質化したため、残業は例外的にしか発生しない。そのため、フルタイム雇用に従事する男女が子育てしながら、長期的なキャリアを形成することが当たり前になってきた。公的な育児サービスも、日本より安価に受けることができる。

Loc 1847
日本の「正社員」は、入社する前に職務内容が限定されることがほとんどない。「社員」は会社のニーズに応じて、柔軟に職務内容や勤務地を変えながら働き続けるのである。そのため、日本企業では採用や昇格・昇進にあたって周囲への適応能力、コミュニケーション力といった抽象的・潜在的な能力が重視される。

Loc 2118
何しろ「ノー残業デー」という奇妙なキャンペーンがあるくらいだ

Loc 2178
国による違いが目立つのは、食事準備の分担である。日本では、洗濯と並んで食事の準備は妻がもっぱら担当している。しかしイギリスやスウェーデンではそうではない。傾向として、プロテスタントが強い社会では食事が質素になり、その分食事準備が容易にできるのかもしれない(確かなことは不明である)。そのかわりに、ヨーロッパの国では洗濯は女性の仕事、という家庭が多いようだ。

Loc 2219
現代社会では、配偶関係にある二者は経済的にも助け合うものと考えられており、ほとんどの先進国では夫婦間の扶養義務が法律で定められている。法律を意識していなくとも、結婚したカップルは多かれ少なかれ家計を同じくし、精神的のみならず経済的にも共同生活を送っている。夫がたくさん稼いでいる場合、妻の生活水準も高くなる。同じ世帯を形成しているのに、夫の生活水準と妻の生活水準が全く異なる、ということはない。

Loc 2364
格差以上に深刻なのが社会的分断であると感じる。社会的分断とは、人々のあいだの価値観や態度の対立のことだ。