[読書メモ][Kindle]『タイトルの魔力』

何事であれ、ひとが決然とした態度をとるのは、常にある思想に基づいてのことである。しかもその思想は、漠たる常識のようなものではなく、自ら明確に自覚している価値観でなければならない。(Loc 249)

原因は結果に勝る存在である。なぜなら、結果は原因に依存しているが、原因は結果がなくとも存在しうるからである。(Loc 322)

特にフランス語のピエールは、石を意味する普通名詞と同じ語である(Loc 661)

一面の長所は他面の短所である。(Loc 2544)

タイトルは作品に「ついて」のものなのであって、作品がタイトルについてのものであるわけではない。そして、この関係は絶対に逆転しない。『赤と黒』のように隠喩的でそれ自体がめいたタイトルの場合に、そのタイトルを理解する上で作品を参照しなければならない、ということはある。(Loc 2637)

あくまで作品が主で、タイトルは従の位置にとどまる。タイトルのない作品はあっても、作品のないタイトルは、いまだタイトルとも言えない。(Loc 2642)

「無題」は一種の類型的なタイトルであって、昔の作品のように単にタイトルがない、というのではない。タイトルがあるべきものである、とみなされているからこそ、「無題」と名乗ることによって、タイトルの次元を否定することができるのである。(Loc 3439)

「無題」はタイトルの美学との緊張関係のなかにある。(Loc 3449)

いまわれわれの生きている社会のなかでは、一切のものにID番号がつけられている、とさえ言うことができる。免許証や学生証、住民票、受験票、など、番号のつけられていない文書や書類はないし、広く流通している商品にはすべてシリアルナンバーと製造の場所や日時を示す記号が書き込まれている。(Loc 3486)