[読書メモ]『仕事と家族』

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女性が仕事をすることを望んでいる場合、その可能性を狭めるような制度設計をすることが先進国にふさわしい方向性か、ということだ。女性が高等教育を受ける権利を制限することは難しいだろう。そうであるならば、女性がそこで身につけた知識や技能を活かして働くのを妨げることは、かなりの社会的損失(無駄)になる。

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日本のように女性の長期雇用の見込みが長らく得られなかった国では、「私もあなた(夫)もあまり稼ぎがないから、一緒に頑張りましょう」と考えることができる女性は少なく、むしろ安定した所得を持つ男性が見つかるまで結婚を延期して両親と同居するという戦略をとるだろう。一方、すでに見てきたように、1990 年代後半からは、結婚後も女性に「両立」を望む男性の割合が急増した。

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日本企業の基幹労働力として採用された者は、仕事に関する三つの「無限定性」を受け入れることを要請される。職務内容の無限定性、勤務地の無限定性、そして労働時間の無限定性である。

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大企業の基幹社員への道

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ましてやどちらかに転勤が命じられれば、片方の(たいていは女性の)キャリアプランは破壊される。パートナーのどちらかに転勤の可能性があるというだけで、持ち家を買うかどうかの判断などに必要な、生活の長期的見通しが立たなくなることもあるだろう。

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共働き社会が実現できないのは、やはり「男性的働き方」に女性を引きこもうとしているから

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このように、これまでの日本の福祉政治はその場しのぎ的なものだった。ただし 1980 年代以降、どちらかといえば、日本の政治はヨーロッパ的な福祉国家を目指す路線を捨て去り、自由主義レジームに向かう力学のもとで動いてきたといえよう。

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実は、私たちは職務内容がある程度限定されている労働者については、その職務の名前で職業を表現し、限定されていない場合には「普通のサラリーマン」、あるいは単に「会社員」と表現するのだ。この職務内容の無限定性は、第3章で詳しく説明したように、特に日本において広く普及した働き方だ。

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工業化とポスト工業化のなかで、家族の機能の一部が外部化されてきたとはいえ、いまだに多くのサービスが家族内部で提供されている。

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カップリングが合理的に成立するならば、賃金率の高い男女から順に関係が成立し、高い所得と低い所得とのカップルは成立しない。/このようなカップリングを経済学ではアソータティブ・メイティングという。社会学にはこれに近い同類婚という概念がある。同じ経済階層、同じ学歴、同じ宗教、同じ人種・民族の者どうしが結婚することである。

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筆者は格差以上に深刻なのが社会的分断であると感じる。

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有償労働は税と社会保険料の負担を通じて世帯を超えた支え合いを実現する