[読書メモ]『お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか?』
p34
今まで疑うことのなかった価値観を問い直すということ自体が、無条件のベーシックインカムという考え方の持つ重要な要素になっているのです。
pp44-45
一方、無条件のベーシックインカムというのはそういった考えとは違います。まず、人問の存在を尊重するところから始めるわけです。人は誰でも基本的な収入を必要とするわけですから、市民の権利といいますか、人権としてベーシックインカムを考える、私たちが存在することを無条件に肯定する__ここから始まります。
p105
「職」のすべてが社会的に必要な労働でもないでしょう。社会的に必要な労働がすべて現実に誰かに担われているわけでもありません。
p146
まずは自分自身から始めましょう。理論やモデルからではなくてです。私たちは、他人に何がよいかを指図する政治家ではありません。他人について考え、ジャッジするというのは、それこそまさしく、古くて間違っていて、臆病な態度です。そして退屈でもあります。/何か新しいプランを考え、それを実行に移すときの生活や創造性というのは、前記のような臆病な態度とは正反対のものです。無条件のベーシックインカムは「文化的な収入」なのです。つまり、自由と保障のための収入であり、自分自身の生活の歴史を積み上げていくためのものです。
p148
第一に、彼は、仕事と収入の分離を提唱しました[…]。なぜなら、「自分の収入のために人びとが働くときには、[本来他人のためである] 仕事ときちんと関わることはできないからです。さらに、お金のために働いているというのは幻想です。仕事はいつも他人のためのものです。あなたの収入はあなたとあなたの家族の生活を支えます。そのことは、他人があなたのために生産したものを購入することを可能にします。また自分自身を教育すること、何かを改善すること、変えることをも可能にします。収入と仕事とは、事実の上からして、まったく異なる事柄なのです。
p153
私たちは収入への課税から支出への課税に移行すべきです。私たちがお金を使用する際に、税を支払うべきです。
p157
今日、生活時間の多くは、学校や大学、有給の職において、有用でない形で浪費されています。しばしば、職やプログラムや制度は、あなた自身で考えさせないようにするためだけに存在しています。多くの有給の仕事は、無用で非生産的です。
p159
どうやら多くの人は、一息つく時間、自分が今やっていることが意味があることなのかどうか内省する時間がないように見えるのです。通常の構造のなかで、普通の暮らしのなかで、一息つく時間、自分自身に戻れる時間がないようです。
p160
無条件のベーシックインカムは様々な問題を解決しません。解決するための前提条件を提供するだけです。解決するかどうかはあなた自身にかかっているのです。今日よりもさらに。
p184
できるだけシングル・イシューに限定しないよう、様々なトピックを積極的に取り上げるようにしてきました。そうして、「自分とは異なる他者と共に生きる空間」をつくるために試行錯誤してきたのです。
p206
当事者研究とは、精神障害の当事者が自分の病について研究するというものです。
p223
大企業で過労死したり、ブラックバイトでこき使われたりするのは、他に道がないと信じてしまうからでしょう。市場はたくさんあるモノの入手先の一つでしかなく、貨幣はたくさんある価値の一つでしかない。そういう実感がある状態であれば、安心して自らの価値観に準じて自分の探究したいことを探究することできるように思います。そのためには、再分配と、特に互酬の領域を確保したい。
p226
オルタナティブな経済をつくろうという試みが失敗する理由として、コミュニティが閉鎖的になりすぎることがあります。閉鎖的なコミュニティは一つの価値観に閉じこもって探究の機会を失います。